染野屋 代表取締役社長兼CEO 八代目 染野屋 半次郎さん

「大豆は世界を救う」持続可能な社会を目指して~

ラッパの音とともにやって来る
移動販売のお豆富屋さん「染野屋」は、
文久2(1862)年に
水戸街道の宿場町取手で創業した。
それから150年余り、
八代目となる染野屋半次郎さんは、
豆富の魅力を日本はもちろん
世界にも広めようと奔走している。
根底にあるのは持続可能な社会の実現。
豆富がこれからの社会のために
できることとは?
「大豆は世界を救う」と語る
半次郎さんにその熱い思いを伺った。

原料にこだわった豆富を直接お客さんの元へ

「自分が豆富屋になるなど思ってもいなかった」
という半次郎さん。
輸入雑貨の販売を手掛けていたが、
「染野豆腐店」を経営していた義父が急逝。
豆富屋を継いだ義母の手伝いをするうちに
豆富屋に「ハマっていった」という。
豆富屋に転身することを決め、
まず取り組んだのが、原料の見直し。
日本古来の伝統食である
豆富は日本産であるべきと、
国産大豆にこだわり、
凝固剤でなく天然の海水にがりを
使用することにした。
家族の「美味しい」を励みに追求したのは
「自分の家族に食べさせたいもの」。
納得のいく豆富はできたが材料費がかかり、
当然値段は高くなる。
スーパーでは価格で負けてしまうため、
それならばと自家用車で移動販売を始めた。
これが現在の「染野屋」の
販売スタイルの原点となった。

791person_ph早朝から豆富を作り、
夕方からは移動販売に出かけ、
くたくたの毎日の中で半次郎さんを
元気づけ支えたのが、
お客さんの
「ありがとう」「おいしかった」という言葉。
「対面販売の魅力に気付きました。
直接お客さんと話ができ、
こちらの思いや商品の魅力を伝えられる。
ファンが増えていくことが嬉しかったです」。
それから20年近く経ち、
お客さんの数は15万人にも増えたが、
直接商品を届けたいとの思いから
今も移動販売を続けている。
それも商品に
自信をもっているからこそできること。
販売員は商品を売るよりも、
「おいしい」という感動を
お客さんに伝えることを心がけているそうだ。

深刻化している森林破壊を食い止めるために

安全で美味しい豆富を届けることに
邁進してきた半次郎さんが、
今見つめているのは
数年、数十年先の地球の未来のこと。
染野屋が掲げているミッション
「大豆は世界を救う」の実現だ。
大豆と世界がどう結びつくのか。
それは
地球温暖化の原因になっている森林破壊を、
タンパク質を肉ではなく
大豆から摂ることで
食い止めることができるという意味だ。

地球上にある陸地の約3割を
森林が占めているが、
近年の森林破壊は深刻で、
毎年、日本(本州)の
約3分の2もの天然林が
人間の手によって滅ぼされているという。
そのスピードは、
あと100年で
地球上の森林がなくなってしまう
と言われるほどだ。
なぜこれほど減っているのか。
その主な原因は
世界の人口の急激な増加と、
肉を食べる人が増えたことにあるという。
食用肉を得るためには、
家畜の飼料として大量の穀物が必要で、
牛肉1㎏を作るのには11㎏、
豚肉1㎏には7㎏、
鶏肉1㎏には4㎏の穀物が必要となる。
そのため家畜の飼料用の畑や放牧場として
森林伐採が急速に進んでいるのだ。
「例えば3,900平方メートルの
耕作地に大豆を植えて
そのまま食用にすれば
人間100人分の年間必要量が賄えるのに対し、
それを牛の飼料として
肉を食した場合は
人間5人分の年間必要量にしかなりません。
畑の肉といわれる大豆なら、
牛肉に比べて20倍も効率よく
タンパク質を作ることができるのです。
つまり肉を食べずに大豆でタンパク質を摂れば、
耕作地も少なくて済むので、
森林伐採を食い止められ、
地球環境を守れるというわけです」と
言葉にも熱が入る。

ベジタリアンに支持される豆富をヨーロッパに

世界では今、
肉を食べないことが
ちょっとしたブームになっている。
ハリウッド俳優やミュージシャンなど
著名人たちの菜食主義が紹介され、
日本でもマクロビオティックの
メニューを提供する
レストランなどが増えてきている。
半次郎さんも活動を始めてから
少しずつ野菜中心の食事に
移行していったところ体調がよくなり、
今では肉はほとんど口にしないそうだ。

そんなベジタリアンやヴィーガン
(卵や乳製品、ハチミツも食べない厳格な菜食主義)が
注目している食材が豆富。
しかしヨーロッパなど
海外の国々で売られている豆富は、
日本の豆富とは味も食感もまるで別物。
メイド・イン・ジャパンの
本当の豆富を伝えたいと、
イタリアやフランス、ドイツ、オーストリアなどで
試食会を行ったところ大好評で、
手ごたえを感じたという。

「肉の代わりに大豆」文化の逆輸入を目指す

肉を食べないという人たちは、
健康や美容のためかもしれない。
でも環境のことを考えて肉食をやめる人も
もっと増えてほしいというのが
半次郎さんの願いだ。
国内外で菜食主義を推奨している半次郎さんが、
オランダで
「いつも食べている肉を減らして
大豆食品に切り替えるだけで森林減少を防げる」
という内容の講演をしたときに、
「環境を守るために、
すぐにでも出来ることを教えてくれてありがとう」
という言葉をかけられたという。
環境のために何かしたい、
でも何をすればよいか分からない人に
受け入れられるという確信がもてた出来事だ。

環境問題に敏感なヨーロッパで、
大豆を食べることが森林保全につながるという
概念が広まり、
豆富の人気が高まっていることが日本に伝わり、
日本人も「肉の代わりに大豆」という考えに
興味・関心をもってほしい。
日本文化が海外で認められ、
再び日本でも人気が高まる。
そんな「文化の逆輸入」を期待している。

自分のことを「実業家ではなく活動家」
と話す半次郎さん。
健康にも環境にも優しい
大豆食品を世界に普及させ、
持続可能な社会を創っていくこと、
それが染野屋のミッションだと考えている。
「子どもが生まれてから食の安全はもちろん、
環境のことにもすごく敏感になりました。
この先、ますます人口は増え、
資源は枯渇していきます。
少しでも早く
この問題に向き合わなければ手遅れになります」と
危機感を感じつつ、
万人に受け入れられるよう
美味しい大豆商品の開発にも取り組んでいる。

森林破壊によって引き起こされている
気候変動は大豆で解決することができる。
そんなメッセージを
これからも広く世界に発信していくつもりだ。

プロフィール

2004年
「染野豆腐店」を継承、
本家「半次郎商店」を統合し、「染野屋」を設立
2014年
七代目より八代目染野屋半次郎を襲名

講演「大豆は世界を救う」
YouTubeにて配信
 http://youtu.be/6wslrltRhGs

染野屋 http://someria.jp/

 


注釈* 持続可能な社会とは:
「健全で恵み豊かな環境が地球規模から
身近な地域までにわたって保全されるとともに、
それらを通じて国民一人一人が
幸せを実感できる生活を享受でき、
将来世代にも継承することができる社会」
/平成18年4月に閣議決定された第3次環境基本計画より

※染野屋さんでは豆腐を「豆富」と表記しています。


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