いもりの里協議会の皆さん

アカハライモリの棲む里山・谷津田 「いもりの里」で 豊かな自然体験を

 取手市西部の里山にある「いもりの里」。
自然観察や農業体験、アウトドア体験などができるフィールドに、
準絶滅危惧種となったアカハライモリが棲息する。
8年前、筑波大学と地域住民、行政
それぞれの思いが一つになり、
荒れ放題だったこの場所を自然豊かな風景へと再生させた。

子どもたちに豊かな自然が感じられる体験を

取手市西部にある「いもりの里」では、
毎月1回ボランティアの皆さんが集まり、
自然観察や屋外料理など、
大人も子どもも楽しめる体験を行っている。
取材の日は、星空の下に大きなスクリーンを張り
自然の話を聞いたり、
光に集まる虫を観察するイベントが行われた。
子どもたちは、カブトムシ相撲に盛り上がり、
夏の夜を楽しんだ。
そんないもりの里も、以前は葦などが高く生い茂り、
不法投棄なども目立って荒れ放題だった土地。
谷津田を復元して
「次世代に自然を残したい」という地元住人や、
自然とふれ合える街づくりを目指す行政、
そこに筑波大学の先生方の協力も頂き、
里山を手入れし「いもりの里」として復活させた。
7年前には「いもりの里協議会」が発足。
谷津田での田植えや稲刈り、どろんこ遊び、
餅つき、ドラム缶風呂、ザリガニ獲りなど、
豊かな自然環境を生かした
子どもたち向けの体験イベントを行っている。

イモリを研究する千葉親文先生との出合い

お話を伺った筑波大学 生命環境系准教授の千葉親文さん

お話を伺った筑波大学 生命環境系准教授の千葉親文さん

なぜ、イモリなのか?
そんな疑問が湧くと思う。
昔は田んぼや小川など、
水辺のどこにでもいたというイモリ。
しかし都市開発や、繁殖した
アメリカザリガニに捕食されてしまった影響で、
その数は減少し、
将来的にいなくなってしまうかもしれない
準絶滅危惧種に指定されている。
イモリは四肢や尾、目や心臓、脳までもが
失っても元通りに再生することができる能力をもっている。
そんなイモリの特性に着目し、
再生の仕組みを解き明かすことで、
日本の再生医療に役立てようと
研究を進めているのが筑波大学の千葉親文先生。
当然ながら研究には、
多数のイモリの卵や成体が必要となる。
しかし自然界でその数は減少し、
養殖も容易ではなく、
イモリの確保が研究のハードルとなっていた。
研究一筋だった千葉先生だが、
10年くらい前、
つくば市で子ども向けに毎年行われている
「科学フェスティバル」に出展することになり、
研究用のアカハライモリの展示を行った。
大きな水槽にたくさんのアカハライモリを入れて、
観察したり触れたりできるようにしただけだったが、
子どもたちが大勢集まり大好評だった。
この様子を見ていたのが
取手市の次世代教育センターの宮本日出雄さん(故人)。
子どもたちの自然体験教室などを主催していた宮本さんは、
子どもたちが興味をもつアカハライモリに関心を寄せ、
千葉先生に「子どもたちに夢や希望をもてる企画を」と、
イモリの展示とイモリの研究についての講演を依頼してきた。
千葉先生は快く承諾し、
イモリを題材にした「いのちの不思議」の講義が何度も行われ、
宮本さんとの交流も深める中で、
昔ながらの谷津田や里山の環境を復元し、
研究・教育用のイモリを飼育するという構想が生まれた。
しかし当時は、イモリを自然の中で
大規模に飼育することは難しいとされていた。
構想を協議するために千葉さんが開いた会議の中で、
躊躇するイモリの研究者に対して
「科学者ができないなんて言ってはいけない。
子どもたちは夢をなくす」
と背中を押してくれたのは宮本さんだった。
今では、いもりの里で養殖された
アカハライモリも順調に数が増え、
自然の中で養殖できるモデルケースとなった。
全国からイモリの研究者が視察に訪れ、
アカハライモリのストックセンターとしての
役割も担うようになっている。
「水辺の生き物というとメダカやゲンゴロウ、
ホタル、ドジョウなどが知られていました。
しかし、いもりの里ができたころは、
子どもたちの教科書や観察の手引書などにも
イモリは掲載されておらず、
子どもたちの多くはイモリを知りませんでした。
そんなイモリが、今では
環境汚染の程度などを調べる際の
環境指標生物として知られるようになり、
皆がイモリの棲む自然環境の大切さを
理解するようになりました」
と語る千葉先生。
全国各地の身近な水辺で
アカハライモリの姿が見られるようになることが、
千葉先生の夢だ。

研究のために生物の命を無駄に犠牲にしてはならない

千葉先生は福島の裏磐梯の自然豊かな環境で育ち、
生き物が大好きな少年だった。
そんな千葉先生は命にも強いこだわりがある。
「生き物を殺すのは食べるため、
生きるためにだけにするべきで、
興味本位で殺すのは人間のエゴ。
生き物を殺すような研究は必要性があることが大事で、
興味本位の研究であってはならない」と。
研究者になった当初は
イモリの視神経系の研究をしていたという千葉先生。
だが、あるとき
「自分の子どもにお父さんの仕事は何?
と聞かれたときに、自分の研究をどう説明するか。
それを考えたら
視神経系の研究に意味があるとは思えなかった。
そこで研究のテーマをイモリの再生に切り替え、
イモリから学べることを人に役立てようと思った」と、
現在の研究に行きついた経緯を話す。
研究を進めるにあたっては、
年間約1000匹のイモリが必要になるため
「いもりの里のフィールドがなかったら、
前に進めなかった。本当に感謝している」と千葉先生。
「子どもたちの教育に役立てようと
きっかけを作ってくれた宮本さんから始まり、
研究に役立てたい大学、街づくりにつなげたい行政、
そして私たちをサポートしてくれる
住民のみなさんのおかげでいもりの里は成り立っている。
三者の協力体制ができているのが、ここの強み。
環境を復元するには長いスパンが必要なので、
みんなの協力があってこそです」。

いもりの里を継続させるために

いもりの里で行う自然観察などのイベントの際には、
千葉先生を始め、丸尾文昭先生、八畑謙介先生など
筑波大の先生方が講師として訪れる。
環境を守るための草刈りやザリガニの駆除などには、
先生や学生もボランティアの人たちと一緒に汗を流す。
それも自分たちの研究を支えてくれている
住民の人たちや子どもたちに貢献し、
研究の面白さを伝えたいという思いから。
「大学の先生から直接学べるのはありがたい。
ここに来ている子どもたちの中から、
将来、研究者が現れると嬉しいですね」
とボランティアのメンバー。
「さまざまなイベントに参加してもらうことが
いもりの里を守ること、継続することに繋がります」
と事務局の南条さんは語り、
イベントへの参加を募る。
いもりの里での体験は、
子どもたちにたくさんのワクワクを与えてくれそうだ。

プロフィール

いもりの里協議会さん

2009年10月設立。
長年放置されていた里山・谷津田を保全し、
次世代に豊かな自然を残すと共に、
復元した自然環境を子どもたちの学習の場として活用。
農業体験や、筑波大の先生や学生が講師を務める
自然観察会や公開講座などを開催。
活動のフィールドである「いもりの里」は、
イモリの屋外養殖のモデルケースともなっている。
HP:http://imoritoride.blog.fc2.com/

Information[インフォメーション]

いもりの里協議会事務局
住所:取手市小堀3973-2
TEL:080-4072-5050
FAX:04-7187-5003
Email :toride@imori-net.org


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