模型製作集団「夢・ピン歩気」 石井 一彦さん

ジオラマで振り返る昭和10年当時の取手の風景

11月にリボンとりで(取手市)で
常磐線取手駅・藤代駅開業120周年を記念して
「鉄道フェス・鉄道ミニ美術館」が開かれた。
この会場で注目を集めたのが、
昭和10年当時の取手駅周辺を再現した
150分の1スケールのジオラマ。
制作したのは取手で写真館を経営する
石井一彦さんを始めとする
模型製作集団「夢・ピン歩気」の皆さん。
「多くの皆さんの協力のおかげで
40年来の夢がやっと叶いました」と語る
石井さんに、ジオラマに込めた思いを伺った。

ジオラマが再現する懐かしい風景

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常磐線をまたぐ四ツ谷橋

取手駅を中心に、昭和10年当時の街並みを再現した
長さ3.7メートル、幅1.6メートルの巨大ジオラマ。
駅前には結城醤油、山中屋、新六本店などの
老舗が軒を連ね、銀行や病院が建つ。
西口の駅前には沼があり、牧場が広がる。
常磐線をまたぐ四ツ谷橋は木橋で、
精巧に作られた橋桁が美しい。
線路を走るのは、明治、大正時代に作られた
蒸気機関車やガソリンエンジンで走る
ガソリンカーと呼ばれる個性的な車両だ。

今から80年余り前の取手の街。
それを記憶している人は少なくなってしまったが、
それでも見る人に郷愁の念を起こさせる
懐かしい風景に、ジオラマを眺めながら
「こんな駅舎だったよね」
「そうそう、沼があったよね」などと、
思いを馳せる人の姿も多く見られ、
一人ひとりの思い出に残っている「取手の街」へと、
タイムスリップを楽しんでいるようだった。

多くの人の協力で40年来の夢を現実に

子供の頃から模型作りと鉄道、写真が大好きだった石井さん。
「撮り鉄」で、若い頃は国鉄の周遊券を使って、
撮影スポットを探しながらほぼ日本全国を旅した。
そして昭和50年、両親の縁の地であった取手に
写真館とプラモデル、骨董品などを扱う店をオープンさせ、
本業の傍ら模型作りにも熱中。
これまでに数えきれないほどの鉄道車両を作り、
今でも箱に入ったままのパーツが多数、
自宅の作業場に眠っている。
「取手に引っ越してきたときから、
いつか昭和10年頃の取手の
ジオラマを作りたいと思っていたんですよ。
この時代の蒸気機関車や列車が好きでね。
これらの車両が走っていた時代を再現したいと思っていた。
だから当時の建物とかも少しずつ作っていて、
それがたまたまこのような機会に恵まれ、
形になって嬉しい限りです。
40年来の自分の夢が叶いました」と笑みがこぼれる。
「これも支えてくれたみんなのおかげ。
みんなの思いが形になりました。
昔の話を聞かせてくれた人や、
手伝ってくれた人たちに感謝の気持ちでいっぱいです」。

細部にまでこだわり精巧に再現

取手駅を囲むようにして咲く満開の桜。

取手駅を囲むようにして咲く満開の桜。

制作にあたっては埋蔵文化センターを訪ねたり、
取手市史などの書物を調べるなどし、
当時の歴史を掘り起こすところから始めた。
取手駅の駅長に話を聞き、
当時の資料や写真を借りることもできた。
そこで目にした昭和4年4月に撮影された
写真に写っていたのが、
取手駅を囲むようにして咲く満開の桜。
これにヒントを得て駅前に桜並木を作ることを思いつき、
全体の構想が思い描けたという。
そしてイメージを形にすべく、
戦後に撮られた航空写真やゼンリンの地図などから、
周辺の地形をなるべく正確に再現していった。

これまで鉄道や船、飛行機や戦車など
乗物の模型は数多く制作していた石井さんだが、
ジオラマに関しては素人。
そこで出会ったのが、
ジオラマ制作のプロである丹羽明夫さん。
取手に住んでいることを知り、
早速協力をお願いすると快く応じてくれ、
夢の実現に向けて一歩を踏み出すことができた。
丹羽さんに教えてもらいながら、
また友人たちにも手伝ってもらいながら、
木の一本一本、土地の起伏や沼、牧草地、
線路などを制作。
細部にまでこだわり、
結城醤油の煙突には避雷針を立て、
店のオリジナルマークも付けた。
愛宕神社の中に奉納されているお札は、
本物のお札を撮影して1センチに縮小した。
道路の砂は一粒ずつピンセットで置いていった。
こうして約2カ月の制作期間を経て、
見る人を感嘆させる緻密で精巧なジオラマが完成した。

夢も盛り込んだジオラマはまだまだ進化する

しかし地形や駅前の店の配置など忠実に再現した半面、
よく見ると、
これはここにはなかったのでは?と思う建物も。
石井さんの写真館「ピン歩気」も
実はこっそりジオラマの中に建っている。
「なるべく正確には作っているけど、
取手の歴史や思い出も盛り込んでいるんです。
駅舎に付いている『取手駅』の駅名も本当はなかったけど、
当時の字体を参考に右から書きました。
他にもお世話になっている人のお店や名前なんかを、
お礼の気持ちを込めてこっそり入れてあります」と石井さん。
模型やジオラマとはもともと夢の世界を再現したもの。
だから正確であるばかりがジオラマの価値ではなく、
夢を盛り込んだものでありたいというのが石井さんの思いだ。

「ジオラマに完成はありません。
これからも付け足していくつもりです。
ジオラマの中に家を建てたいという人がいたらご相談を(笑)」と、
まだまだ進化する予感。
「自分は作りたい物を自由に作っているだけ。
見る人が自由に見て、思いを馳せてくれればいい。
そして少しでも取手に愛着をもってくれると嬉しいですね」と、
大好きな取手に人々が目を向けてくれることを望んでいる。

長年の夢を実現させた石井さんだが
「若い頃はいっぱい働いたけど、
好きなことをしていると思えば苦ではなかったね。
夢をもっていれば実生活も楽しくなるし、
夢を実現するための努力は負担でなくて楽しみ。
だから夢は常にもっていたいですね」と語り、
まだまだ夢がいっぱいあるそうだ。
最後に人生を楽しむコツは?と尋ねると
「周りの人に恵まれて、
周りの人に助けられていろんなことをやってこれた。
いい人とたくさん出会うことですかね」と、
人とのつながりを大切にする
石井さんらしい言葉が返ってきた。

模型は現在もリボンとりで3階に置かれてあり、
3月中旬までは見られるようになっている。
ぜひ足を運んでかつての取手に思いを馳せてほしい。
取手を知る人なら、だれもが心に響く風景がそこにはあるから。

プロフィール

模型製作集団「夢・ピン歩気」
石井 一彦さん [Kazuhiko Ishii]

1947年    東京生まれ。取手市在住。
1975年    取手市東に写真館とプラモデル、骨董品などを扱う店をオープンさせた。
現在は、写真館「夢スタジオ ピン歩気」

Information [インフォメーション]

模型製作集団「夢・ピン歩気」
メンバーは、石井一彦さん、滝沢公男さん、
田谷伸之さん、中村信一さん、丹羽明夫さん、
谷口卓宏さん、斎藤智也さん、小林風太さん、
写真館スタッフと女性有志のみなさん


コメントが2 件あります。 “模型製作集団「夢・ピン歩気」 石井 一彦さん

  1. 原品 渉 ハラシナ ワタル
    2017/2/1(水) at 11:10 AM

    はじめまして。茨城の阿見町に住んでおります原品と申します。子供がジオラマに興味がありご連絡しました。宜しくお願い致します

    • josonet
      2017/2/1(水) at 6:10 PM

      コメントありがとうございます。
      石井さんにお伝えしますので、少々お待ちください。

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