劇団どんぐり  河野敬子さん

人形劇で、子どもたちに笑顔と手作りの温もりを

本格的な舞台や人形、演出で玄人はだしの公演を行う「劇団どんぐり」。
幼稚園や小学校、子育て支援センター、図書館など子どもたちが集まる場所に引っ張りだこの人形劇団は27年前、幼稚園ママたちの集まりからスタートした。
テレビやゲーム漬けの子どもたちに 手作りの温もりを届けたい、そんな思いで続けてきた公演は376回を数える。

始まりは軍手人形の一人芝居

30年近く前、「どんぐり」のメンバーは、子どもが通うみどりが丘幼稚園(取手市)で出会った。図書委員だった河野敬子さんは子どもたちに読み聞かせをするときに、軍手を使った人形で『こぶとりじいさん』の一人芝居をした。これが子どもたちに大ウケ。園長先生の「他にもやりたい人がいるかもしれないから、募ってみたら」の一言で20人くらいの母親が集まり、これが「どんぐり」結成のきっかけとなった。
河野さんは高校・大学時代に演劇部に所属し、芝居を楽しんできた。部活に入ったきっかけは中学時代に見た学校の演劇部の公演。「全国的にも名前が知れているレベルの高い演劇部だったのですが、『そら豆が煮えるまで』というお芝居がとてもかわいらしく、どきどきわくわくしました。あの時の感動が自分の原点になっている気がします」と河野さん。
引っ込み思案な性格だった河野さんにとって舞台の上は憧れの別世界。自分が演じることなど考えられなかったそうだが、高校に進学すると友人に誘われ演劇部に入部。熱心に取り組み、高校卒業時の卒業論文では演劇の脚本を書いたそうだ。

760person2手作りの温もりを伝えるために

「どんぐり」ではこれまで21の作品を演じてきたが、その半分はオリジナルの作品。『ヘンゼルとグレーテル』『ジャックと豆の木』などの童話も、ミュージカル風に仕立て直している。脚本を担当する河野さんをはじめ、作曲ができる人、歌が歌える人、裁縫ができる人、絵が描ける人など、「どんぐり」にはプロ並みの高い技術をもった人が集まっており、これが作品の完成度の高さにつながっている。子どもが出来ると「○○ちゃんのママ」で一括りにされがちだが、「どんぐり」という発表の場では、それぞれ培ってきた特技や経験を生かすことができる。そしてそれが「どんぐり」の原動力になっている。
「人形劇を始めた27年前はちょうどファミコンやビデオが普及してきた頃で、子どもたちは家で画面を見てばかり。おもちゃも既製品を買うのが当たり前で、自分遊びを創造しなくなっていました。しかし、軍手のこぶとりじいさん人形に喜んでくれている。自分で考えたものを形にして見せることに意義があるのではないかと思い、手作りにこだわって作品を作ってきました」と河野さん。
人形劇については誰もが素人。みんなで試行錯誤しながら理想的な動きをする人形を作り、表現の仕方や背景、小道具などを工夫してきた。現在メンバーは12人。公演に出かけるのは10人で、うち2人は声(セリフや歌)を担当するため、実際に人形を動かすのは8人だ。一人で二役、三役は当たり前で、同時に背景や小道具も操作するなど大忙しの舞台であるため、いかに容易に自然な動きを表現できるかが重要になってくる。取材に訪れたこの日も、新しい作品で使う蝶をどうやって飛ばすか、竹ひごや団扇の骨組みに付けるなどして試していた。一つ一つを丁寧に納得がいくまで作り込む姿勢が、観る人を魅了する舞台を作っているのだ。

子どもたちの反応が楽しみ

人形劇をやっていて何より楽しいのは子どもたちの反応。「いろいろな場所で公演をしてきましたが、子どもたちの反応はさまざま。思いもよらない場面で笑ったり、物語の山場でない部分で楽しんでいたり。人形に掛け声をかけてくれたり、大きな声で笑ってくれる子どももいれば、感情を押し殺して静かに見ている子どももいます。そんな反応が楽しく、毎回、ライブ感を楽しんでいます」。
公演の後に人形とふれ合う時間を設けると、子どもたちは人形に駆け寄って来る。人形と握手をする子、人形になでてもらって喜ぶ子、どうやって動かしているのか興味津々で人形を観察する子。公演の途中で落ちてしまった王様の冠についていたビーズを手にぎゅっと握りしめ、大事そうに届けてくれた子どももいた。一つ一つが手作りだからこそ、子どもたちにも伝わる温もり。自分で工夫すれば何でも作れることが、子どもたちにはしっかり伝わっているに違いない。

長く続けることができた幸せ

「自分たちが楽しいから」と27年間続けてこられた理由を語る河野さん。「どんぐり」が活動できるのは毎週水曜日の午前中だけ。それぞれが仕事をもち、主婦として母としても忙しい毎日を送る中でも、この時間だけは集まって練習や制作、公演を重ねてきた。普段の生活の中でも人形劇に応用できるものを探し、アイデアを考え、構想を練るなど、人形劇のことを考えることが楽しみにもなっている。「ここに来るとほっとします。みんなそれぞれにいろいろある日常だけど、同じ目標を共有して、頑張ることで日常からちょっと開放される。それが心地いいのでしょう」。
最近は「小さい頃に自分が見ておもしろかったので」と子どもを連れてやって来る若いママもいる。子どもの頃の思い出が心に残り、我が子にも見せたいと思う。長年やってきたからこその、そんな繋がりが嬉しい。これからも長く続けていきたいが大きな荷物の搬出入は重労働で、最近の課題はもっぱら道具の軽量化だとか。「どんぐり」がこれからも継続していけるよう、若いママたちにも参加してほしい。「赤ちゃんをおぶって公演を行ったこともありました。子育て中のママも仕事をもっているママも大歓迎です。いっしょに人形劇を楽しみませんか」とメンバーを募集している。

秋になると子どもたちのポケットに入っているドングリ。見つけるとちょっと嬉しいドングリ。身近なものだけど宝物にもなるドングリ。子どもたちにとって「劇団どんぐり」もそんな存在でありたい。子どもたちに寄り添い、子どもたちに親しまれている人形劇団は、これからも子どもたちにたくさんの笑顔を届けてくれるだろう。

プロフィール

河野 敬子  Keiko Kouno

1987年、「劇団どんぐり」を子どもの幼稚園が一緒だった母親たちで結成し、現在12名で活動。
各所で公演を重ね、これまでに21作品、376回を上演。
毎年12月には寺原公民館でクリスマス公演を開催。
新メンバーは随時募集集。
活動は毎週水曜日10:00〜12:00 寺原公民館。