作家 道尾 秀介さん

心の距離を大切に文章を紡ぎ、音楽を奏でる

 2011年に『月と蟹』で第144回直木賞を受賞した道尾秀介さん。
ミステリー長編『向日葵の咲かない夏』がミリオンセラーになり、
著書累計部数は500万部を超える。
また、作家として活躍する一方、
アイルランドの民族楽器ボーンズの奏者としてステージに立つ。
今回は、道尾さんの友人で取手市議でもあり
ものまねタレントのRYUさんも同席して、作品や活動のことを伺った。

作家としての原点は「自分が読みたいものを書く」

「知り合いの紹介でみらい平駅前のバーで初めて会ったんだよね」と
親し気に話す道尾さんとRYUさん。
二人は飲み友達だそうで、年が近いこともあり、
すぐに意気投合したという。
道尾さんはつくばみらい市在住。
作家という職業柄、
家で仕事に集中できる環境の良い場所を探して住まいを移したそうだ。
「RYUさんをはじめ、
ここは人口が少ない分繋がりやすさを感じますね。
ちなみに、毎日新聞に掲載中の『満月の泥枕』には
RYUさんがモデルのお笑い芸人が登場しているんですよ」と道尾さん。
「そうそう、みらいフェスタにふらっとやって来たときに、
いきなりステージに上げちゃったこともあったよね」とRYUさん。
「この辺りは飲食店が少ないから、
一つの店にいろんな年代のいろんな職業の人が集まる。
それも、都会にはない良さで、
選択肢が少ないのは、むしろいいことですよ」と、
ここでの暮らしを楽しんでいる。
さらに「街ができていく感じも見ていておもしろいですね。
新しい店ができたり、ときにはつぶれたり。
住人もどんどん増えつつ、
街に合わせてみんなのライフスタイルも変わっていったりして」と語る。

デビューから12年、現在26作品を刊行し、
ドラマや映画の原作も手掛けるなど、
作家としての実績を積み上げてきた道尾さんだが、
作家になったきっかけは意外とあっさりしたもの。
17歳で初めて小説に触れ、たくさんの小説を読んだが
「自分で読みたいものを書いてみたら、
自分が書いた小説のほうがおもしろかった。それで作家になりました(笑)」。
そして2004年『背の眼』で小説家デビューし、12年目の今でも
「自分が読みたいものを書く。それがなくなると芯が抜けてしまうから」
という気持ちで書いているそうだ。
そんな道尾さんの小説を「ライブ感があって、生き物のよう」と評するRYUさん。
「そう感じてもらえるのは嬉しい」と応じる道尾さん。
「余白を残すことで、読者の頭の中で登場人物が能動的に動きだし、
書かれていない部分まで想像させる。そしてその想像を裏切る。
それが小説だと思っています。情報だけを伝えるなら小説である理由はなく、
映像の方が短時間ですむから」と語る通り、
道尾さんが手掛けるミステリーには、「何?」「どういうこと?」があふれていて、
最後までページをめくる手を止めさせない。
そして期待を裏切らず、最後に思わぬトリックが仕掛けられ、
ミステリーの面白さを存分に味わわせてくれる。

 

小説家として演奏家として思うこと

今や人気作家の一人である道尾さんだが、
執筆活動の合間をぬってボーンズ演奏家として
音楽ライブのステージにも立つ。
タレントで歌手の谷本賢一郎さんとも親交が深く、
6月につくばカピオであった
「たにけんのファミリーコンサート」にもゲスト出演した。
「作家とアーティストは、人に喜んでもらえるという点では
共通しているから、二つのモードは邪魔し合わない」と言う。
「ライブは目の前にお客さんがいて反応が直接見える面白さがありますね。
周りの人が自分の中のショーマンシップを高めていってくれる。
そんな楽しさが小説にフィードバックされていると思います」と語る道尾さんに、
「そうそう、わかる」と頷くRYUさん。
「自分も人を笑顔にしたい、人に喜んでもらいたいという思いで、
ものまねも議員もやっているんです。
楽しんでいるお客さんが見えるものまねで元気をもらって、
議員の仕事もがんばれている感じですかね」。
ふたつの仕事を持つ二人は、喜んでもらいたいという思いで共感しあう。

 

人とのつながりで茨城が舞台の映画を

これまでにテレビドラマ『月の恋人』や映画『カラスの親指』など、
映像化もされてきた道尾さんの作品。
そして今度また新たに、道尾さん原案の『名前』が映画化されることになり、
6月に取手ウェルネスプラザで制作発表会が行われた。
主人公は茨城県民、舞台は茨城で、
取手市や守谷市、つくばみらい市、利根町を中心に撮影され、
11月には茨城で完成披露試写会を開催する予定だ。
実はこの映画、茨城南青年会議所の友人との会話の中で、
「町おこしで映画を作りたいんだよね」
「じゃあ俺が書くわ」というノリで、無料で引き受けたとか。
「お金ではなく、遠くの誰かでもなくて、
今近くにいる人と一緒に何かやるのが好きなんですよね。
ここでいい人にたくさん出会えて(ほとんど飲み屋ですけど…笑)、
そんな人たちと一緒に何かやって地域が活性化するなら嬉しいです」と
気さくに語る道尾さん。

 

新作は初めての女性が主人公のミステリー

7月に発売になった最新刊の『スタフ』は
週刊文春に連載されていたもので、初の女性が主人公の物語。
「今までさまざまな年齢や職業の主人公を書いてきましたが、
エアポケット的に女性の主人公は書いてきませんでした。
それは自分が女性ではないので、書けないと思っていたから。
でも書き始めてみたら、主人公が頭の中で勝手に動き出して…」。
そう語る作品は、女性特有の感性で書かれ、
作者が女性ではないかと思ってしまうほど。
日常生活から非日常へスイッチする展開の面白さに、
多彩な登場人物の心情や背景をからめ、
最後にどんでん返しも用意された道尾作品ならではの手法で、
一気に読ませてしまうミステリーに仕上がっている。

今後やってみたいことを尋ねると
「2人で地域や周りのみんなが楽しめるようなイベントを考えたいね」
と答えるRYUさんに、
「いいですね、ぜひRYUさんのエアポケット的なものまねも見てみたい」と道尾さん。
二足のわらじを履く二人が、同じ舞台に上がった時にどんな化学反応が起こるのか、
私たちをどのように楽しませてくれるのか。
道尾さんが紡ぐ作品はもちろん、アーティストとしての活躍も楽しみだ。

プロフィール

作家 道尾 秀介さん [Shusuke Michio]

1975年東京都出身、茨城県在住。
会社員として働く傍ら、2004年『背の眼』で
第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞して小説家デビュー。
2005年退職し作家となる。
2011年『月と蟹』で第144回直木賞受賞。
2016年7月に最新刊『スタフ』を発売。
現在、毎日新聞夕刊に『満月の泥枕』を連載中。
他の文学賞受賞作品に『シャドウ』(本格ミステリ大賞)、
『龍神の雨』(大藪春彦賞)、『光媒の花』(山本周五郎賞)がある。
去年は作家生活十周年記念作品『透明カメレオン』を刊行した。

 

ものまねタレント RYUさん

ものまねタレント RYUさん

1974年生まれ、取手市在住。
日本大学在学中からテレビのものまね番組に出演。
テレビ初出演の『全日本そっくり大賞』でブランプリ獲得。
日本テレビの『ものまねグランプリ』や
BS日テレ『コロッケ・千夜一夜』などに出演。
特に、久保田利伸のものまねは本人も公認の実力。


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