(株)山﨑煙火製造所 代表取締役 山﨑 芳男さん

夏の夜空に大輪の花を咲かせよう

夏の夜空を華やかに彩る花火。
一瞬の輝きのために手間と時間をかけて作られた職人の技が、観る者に大きな感動と元気を届けてくれる。
土浦全国花火競技大会入賞の常連である山﨑煙火製造所は、伝統を引き継ぎ100年以上も花火を作ってきた。
美しさに隠された花火作りの苦労や思いとは?
三代目の山﨑さんに伺った。

花火作りはハードな仕事

社内に飾られたたくさんの賞状やトロフィー。その数の多さから技術の高さがうかがえる。会社が創業したのは明治36年。農業の合間に副業として家族で花火作りをしていたのが始まりだが、当時は合図花火などが主だった。
子供の頃から家業を手伝い、花火が身近にあった山﨑さんは、高校卒業後は自然と花火師の道へ。土浦の花火屋に修業に出向き、花火作りに没頭した。花火作り は地味でち密な作業。「真っ黒になりながらハードな仕事をこなす3K(きつい・汚い・危険)の仕事は想像以上に大変でした」と当時を振り返る。
秋から冬、春にかけての乾燥している時期に花火を作り、初夏から夏にかけては各地に出かけては花火を打ち上げる。時は高度成長期で、作れば売れると言われるほど景気は良かったが、夜中まで作業に追われる忙しい日々だったという。

緊張感に包まれる打ち上げの瞬間

これまで数えきれないほどの花火を打ち上げてきた山﨑さん。どんな気持ちで自分たちが作った花火を見守っているのだろう。「打ち上げの瞬間はいつも緊張し ます。花火の良し悪しは別として、とにかく無事に上がってくれることを祈るだけ。無事に上がってほっとして、さらにイメージ通りの花火が開いたとき、やっ と嬉しい、良かったと思えるんです」。
花火は作るのも打ち上げるのも常に危険と隣り合わせ。とくに花火大会場では、事故が起これば多くの観客も巻き込みかねない。そんな緊張感の中で、いつも打 ち上げの瞬間を見守っているという。どんな形にするのか、どんな色にするのか、長年の経験と勘を頼りにイメージを膨らませ渾身の一発を作り上げる花火。そ れだけにイメージ通りの花火が開き、観客の歓声が聞こえ、拍手が沸き起こったとき、やっと花火師としての喜びや達成感を実感できるそうだ。

花火師の技が光る10号玉

花火には「菊」や「牡丹」などの大輪の花が開く「割物」、たくさんの星を放出する「蜂」や「柳」などの「ポカ物」、チョウやハートマークなど図形を描きだ す「型物」、ナイヤガラやスターマインなどいくつもの花火を組み合わせて音楽に合わせて演出する「仕掛け花火」がある。さまざまな演出で観客を楽しませて くれるが、日本の伝統的な花火の技はやはり「割物」に凝縮されるという。中でも直径30センチの尺玉(10号玉)は、花火師の技能や特徴が表れる、いわば 花火師の腕の見せ所。およそ330mの上空に、直径約300mもの大輪の花が開き、観る者を圧倒する。いかに丸く開くか、星の配列や色合いが鮮明か、多重 芯がきれいに出たか、すべての星が一斉にパッと消えるかなどが評価のポイントになる。一般的な花火の2~3倍の手間をかけ、花火大会の何か月も前から準備 を始める。山﨑さんも「大きい物は作り甲斐がある」と10号玉に力を入れ、土浦全国花火競技大会の10号玉の部でも何度も入賞してきた。

花火は世界共通の楽しみ

今年は4月に長崎県のハウステンボスで行われた世界花火師競技会の国内戦で優勝し、9月には海外の勝者と競うことになっている。「料理と同じで、花火は職 人の個性が出るからおもしろい。一般に日本人は丸く開くものが得意で、外国人は飛散させる花火が得意。外国の作品は日本とはまた違った表現や楽しみがあり ます。海外で打ち上げることもありますが、花火を見ると日本人も外国人もみんな同じように楽しんでくれる。花火は世界共通です」。
4年前の震災後は福島の業者に協力して、復興祈願の花火大会にも参加。「花火を見て少しでも元気になってもらえたら」と祈りを込めて鎮魂の花火を打ち上げ た。「伝統ある技術を守りながら、斬新で新しいアイデアも提案し、観る人の心に夢を与える花火をこれからも作っていきたい」と語る山﨑さん。花火師として 一人前になるには10年くらいかかるといい、若手の育成も今後の課題だ。最後に花火の楽しみ方を伺うと、「煙が来ない風上で見るのが一番のポイント。それ からあまり近くで見るより、少し離れて目線が45度くらいのところで見るのが一番きれいに見えます。仕掛け花火は正面で見るとよいでしょう。とくに難しい ことは考えずに、瞬間の光の輝きや音を素直に楽しんでください」。そして何より「保安距離内には絶対に入らないでください。危ないだけでなく、進行の妨げ にもなります」と、最低限のマナーは守るようお願いしている。
今年ももうすぐ花火大会のシーズンがやってくる。一発一発にこめられた花火師の思い、かけられた手間暇、それらに少しだけ思いを馳せ、日本の伝統の美しさを堪能してみてはいかがだろう。

プロフィール

山﨑 芳男 Yoshio Yamazaki

㈱山﨑煙火製造所代表取締役
土浦全国花火競技会、取手市花火大会、常総きぬ川花火大会、伊勢神宮奉納全国花火大会、大曲の花火等、全国の花火大会に出展。

【近年の実績】
・平成24年
第60回伊勢神宮奉納全国花火大会 打ち上げ花火の部 優勝
第1回全国女流花火作家競技大会 優勝
第4回世界花火師競技会(ハウステンボス) 優勝
・平成25年
第87回大曲全国花火競技大会 10号玉の部 準優勝
第5回世界花火師競技会(ハウステンボス) 優勝
・平成26年
第83回土浦全国花火競技会10号玉の部 準優勝
・平成27年
第6回世界花火師競技会国内戦 優勝
ほか、内閣総理大臣賞を土浦競技花火大会4回、大仙市大曲競技花火大会1回受賞